東京高等裁判所 平成9年(行コ)26号 判決
事実及び理由
第三 当裁判所の判断
一 当裁判所も、本件処分は、その直接の法律上の効果として、控訴人に対して何ら不利益を及ぼすものではなく、控訴人にその取消しを求める法律上の利益を肯認し得る特段の事情があるとも認められないから、本件訴えは、不適法として、これを却下すべきものであると判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほか、原判決の説示する「第三 争点に対する判断」(原判決三〇頁二行目から三九頁五行目まで)のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決三三頁二行目から三五頁六行目まで〔編注、本誌一六七号五九頁上段一九行目から中段二四行目まで〕を削る。
2 原判決三五頁七行目から三六頁四行目〔編注、本誌一六七号五九頁中段二五行目から下段一行目まで〕を以下のとおり改める。
「4 しかるところ、前説示の地公法の規定する転任処分の性質に、原審における証人新井規能の証言によれば、本件処分は、控訴人の身分、俸給等に異動を生ぜしめるものではないと認められるうえ、控訴人の勤務する学校の規模、勤務場所、勤務内容について、控訴人に不利益となるものではないことは、前記前提となる事実関係のとおりであるから、以下、控訴人に本件処分の取消しを求める法律上の利益を肯認し得る特段の事情が認められるか否かについて検討することとする。」
3 原判決三六頁四行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段一行目〕の次に、改行して、以下のとおり加える。
「(一) 控訴人個人の不利益について」
4 原判決三六頁五行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段二行目〕の「6」を削り、同一〇行目から同末行〔編注、本誌一六七号五九頁下段一〇行目から一一行目〕の「原告主張の「不利益」があるからといって、」の次に「本件処分が控訴人の勤務する学校の規模、通勤距離、勤務内容についての不利益を伴うものではない以上、控訴人に」を加える。
5 原判決三七頁二行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段一三行目〕の次に、改行して、以下のとおり加える。
「(二) 控訴人の教育権及び教育条件整備要求権の侵害について」
6 原判決三七頁四行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段一六行目〕の「原告の右主張は、」から同六行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段一八行目から一九行目〕の「帰するのであって、」までを「控訴人の右主張は、本件処分によって控訴人が転任後の大綱養護学校における控訴人主張の権利が侵害されたことによる不利益を受けたという趣旨であれば、そのような事実を認めるに足りる証拠はなく、また、転任前の上菅田養護学校における控訴人主張の権利が侵害されたことによる不利益を受けたという趣旨であれば、それは、転任処分による勤務場所の変更によって当然生じ得ることであって、前記(一)同様、本件処分が控訴人の勤務する学校の規模、通勤距離、勤務内容についての不利益を伴うものではない以上、いずれにしても」に改める。
7 原判決三七頁七行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段二〇行目〕の次に、改行して、以下のとおり加える。
「(三) 市教組上菅田分会の不利益について」
8 原判決三七頁八行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段二一行目〕の「7」を削り、同一〇行目から同末行〔編注、本誌一六七号五九頁下段二五行目〕の「これと同視することもできないから、」の次に「本件処分が不当労働行為と評価されるべきものであるか否かは改めて検討することとして、控訴人が本件処分に伴い上菅田分会に所属しなくなったことによって同分会が仮に控訴人主張のような影響を受けているとしても、これをもって、」を加える。
9 原判決三八頁一行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段二七行目〕の次に、改行して、以下のとおり加える。
「(四) 不当労働行為による労働基本権の侵害について」
10 原判決三八頁二行目〔編注、本誌一六七号五九頁下段二八行目〕の「8」を削り、同五行目から同末行まで〔編注、本誌一六七号五九頁下段三二行目から六〇頁上段八行目まで〕を以下のとおり改める。
しかしながら、〔証拠略〕によれば、被控訴人においては、かねて永年勤続者については、一定の年限を超える場合には、配置換えを行うこととしているところ、その取扱いについては、右に証拠として挙示した昭和六二年度横浜市立学校教職員組織編成実施要領事務取扱、昭和六三年度、昭和六四年度及び平成二年度横浜市立学校教職員組織編成実施要領細部事項、平成三年度ないし平成六年度横浜市立学校教職員組織編成実施要領取扱い事項では、多少の変遷がみられるのであるが、そのような取扱いが許されないというべき事情は認められない。本件処分も、控訴人の上菅田養護学校の勤務年数が平成四年三月末日をもって一四年を超えることになるため、被控訴人の右のような取扱いの下において、実務的には平成四年度実施要領及び平成四年度取扱い事項に依拠して行われたものであると認められるのであって、控訴人主張のように、被控訴人の控訴人ないし上菅田分会に対する不当労働行為意思に基づいて本件処分が行われたものであると認めるに足りる証拠はない。のみならず、そもそも、控訴人は、原審における本人尋問の結果によって明らかなとおり、本件処分を受ける以前から、その生活設計上、神奈川県立養護学校へ勤務することを希望していたことが認められるのであって、本件処分を受けた当時、上菅田養護学校にその後も勤務することを予定していたわけではないのである。この点は、官公署作成部分については成立に争いがなく、その余の部分については弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる〔証拠略〕によっても、本件処分を受けたことを契機とする控訴人あるいは控訴人代理人の被控訴人の教育長に対する不服は、要するに、本件処分によって大綱養護学校に転任すると、以後、原則として三年間は県立養護学校への転任を希望することができない結果となるので、平成五年度には、希望校の条件を緩やかにしながら、県立養護学校への転勤を希望するので、平成四年度では、上菅田養護学校に残留させて欲しいということに終始するものであったことに照らしても明らかである。
控訴人は、原審において、神奈川県立養護学校に勤務することができない場合には、上菅田養護学校にそのまま勤務したいというのが控訴人の希望であったかのようにも供述するが、そのような希望は恣意的なものであることはいうまでもなく、前掲各証拠によれば、被控訴人の下において、永年勤続の教職員が同一校種以外の異動区分を希望する場合には、必ず第二希望として同一校種内での配置換えを併願しなければならないという取扱いがされていることと対比しても、控訴人に限って、第一希望の神奈川県立養護学校への転任が認められない場合には、第二希望として同一校種間の配置換えを併願する必要がなく、そのまま上菅田養護学校で勤務を継続することができるというような取扱いが是認される余地のないものであることは、控訴人においても、当然に認識していたはずである。
本件処分が被控訴人の控訴人ないし上菅田分会に対する不当労働行為意思に基づいて行われたものであるとの控訴人の主張は、右説示したところに照らして、これを採用することができない。
因みに、控訴人は、本件処分が地公法四九条所定の「懲戒その他その意に反すると認める不利益な処分」に当たるとして、本件処分の取消しを求める法律上の利益があるようにも主張するが、本件処分は、前説示のとおり、被控訴人が自由裁量によって行うことができる転任処分であって、控訴人に不利益を及ぼすものではないから、本件処分が同条所定の「不利益な処分」に当たることを前提として、控訴人にその取消しを求める法律上の利益がある旨の控訴人の主張は採用の限りでない。
また、控訴人は、本件処分に際して、控訴人が異動希望カードを提出しなかったため、被告の担当者が控訴人名義の異動希望カードを作成して本件処分を行ったとして、その是非も問題にするが、転任処分は、前説示のとおり、原則として、本人の意思のいかんにかかわらず、これを行い得るものであるところ、控訴人に対して本件処分が行われた右認定の経緯に鑑みれば、控訴人が異動希望カードを提出していないのに、本件処分が行われたとしても、これをもって控訴人主張の本件処分の不当労働行為性ないし不利益処分性を認める余地はなく、控訴人に本件処分の取消しを求める法律上の利益を肯認し得る特段の事情を認めることはできない。」
11 原判決三九頁一行目〔編注、本誌一六七号六〇頁上段九行目〕の「9」を「5」に改める。
二 控訴人は、当審において、前記のとおり、原判決に対する不服をるる主張するが、その主張を採用し得ないことは、前記引用に係る付加訂正後の原判決の理由説示のとおりである。
三 よって、本件訴えを却下した原判決は相当であって、本件控訴は、理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 清永利亮 裁判官 滝澤孝臣 佐藤陽一)